本報告書のポイント(肝)
- インフラの「所有権」: ドメインやサーバーの権限を他人に握らせることは、自社の鍵を預けたまま商売をする「占拠」状態と同じである。
- 「身代金」としての移管費: 自由になろうとした瞬間に突きつけられる高額な手数料。それは作業費ではなく、依存から抜け出すための身代金に過ぎない。
- 2030年の自律性: 自分の土地(サーバー)に立ち、自分の言葉で発信できる体制こそが、これからの時代を生き抜く「資産」となる。
【注意】 本記事は、とある製造販売業のオーナー経営者(S氏)との実際のコンサルティング風景を元に再構成した、プチノンフィクションです。
登場する人物・団体名は仮名、交わされた会話は異なりますが、【本質】および提示した【戦略的助言】については、当日お伝えした内容を収録しています。
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CASE FILE: 004 デジタル人質事件
クライアント:某 製造販売業 代表取締役 S氏
相談内容:月額管理費の削減交渉に伴う、サイト所有権および保守体制の監査
リスさん、忙しいところすまない。どうしても納得がいかなくてね。
この見積書を見てくれ。3年前に、あの大手代理店に200万円かけてサイトを作ってもらったんだ。
デザインは洗練されているし、何より「大手」という安心感があった。毎月の管理費も、彼らが「安全を守るため」と言うから、疑わずに払ってきたんだ。
この見積書を見てくれ。3年前に、あの大手代理店に200万円かけてサイトを作ってもらったんだ。
デザインは洗練されているし、何より「大手」という安心感があった。毎月の管理費も、彼らが「安全を守るため」と言うから、疑わずに払ってきたんだ。
ドメインとサーバー移管事務手数料で20万円。さらに備考欄には「データの著作権利用許諾を含む」と。
ふむふむ。200万円という大金と、毎月5万円の管理運用費を払っていたはずなのに、自分の思い通りに動かそうとした途端、この見積もりが出てきた感じですね?
ふむふむ。200万円という大金と、毎月5万円の管理運用費を払っていたはずなのに、自分の思い通りに動かそうとした途端、この見積もりが出てきた感じですね?
そうなんだ。固定費削減のために「自社管理に切り替えたい」と一言伝えただけで、これまでの協力的な態度が嘘のように硬化した。
「移管には重大なリスクがある」「独自のシステムを使っているから、他社では動かない」「お客様に代わって弊社が所有権を管理している」。
等々、まるで、こっちがわがままを言っているような言い草だ。
「移管には重大なリスクがある」「独自のシステムを使っているから、他社では動かない」「お客様に代わって弊社が所有権を管理している」。
等々、まるで、こっちがわがままを言っているような言い草だ。
オーナー。驚くことはありません。
彼らにとって、あなたは逃がしてはならない「おいしい顧客」だったのではないでしょうか。
あなたが「自由」を求めた瞬間、彼らは「パートナー」という仮面を脱ぎ捨て、「取り立て屋」という本性を現した。ただそれだけのことです。
彼らにとって、あなたは逃がしてはならない「おいしい顧客」だったのではないでしょうか。
あなたが「自由」を求めた瞬間、彼らは「パートナー」という仮面を脱ぎ捨て、「取り立て屋」という本性を現した。ただそれだけのことです。
セクション一:「セキュリティ」という名の鉄格子
オーナー。あなたがサーバーの権限(FTP情報やデータベースの管理者権限)を求めた際、彼らは具体的に何と言って拒絶しましたか?
「弊社指定のサーバー以外では動作保証ができません」
「万が一、お客様が直接ファイルを操作してサイトが壊れた場合、責任が持てません」
「セキュリティの観点から、IDやパスワードは一切開示できません」
言われたのはこんなことだね。これを聞くと、素人の私は「そうなのか」と引き下がるしかなかった。
「万が一、お客様が直接ファイルを操作してサイトが壊れた場合、責任が持てません」
「セキュリティの観点から、IDやパスワードは一切開示できません」
言われたのはこんなことだね。これを聞くと、素人の私は「そうなのか」と引き下がるしかなかった。
セキュリティ。実に甘美で、便利な言葉ですね。
「あなたの安全を守るため」と言いながら、実際には「あなたの自由を奪うため」にその言葉を悪用している。
「あなたの安全を守るため」と言いながら、実際には「あなたの自由を奪うため」にその言葉を悪用している。
自由を奪う、だと?
例えば、自分の店を建てたのに、裏口の鍵も金庫の暗証番号も、施工業者が持ったまま渡してくれない。これを世間では「管理」ではなく、「占拠」と言います。
今回のケースは、Web上で同じ状況が起きていると思っても、過言ではありません。
彼らが権限を渡さない本当の理由は、中身を見られると困るからですよ。月々数千円で借りられる低スペックサーバーを、数万円で「保守料」という名の高額な家賃で貸し出している。そのみすぼらしい内部事情を、運営者に知られたくないだけですね。
今回のケースは、Web上で同じ状況が起きていると思っても、過言ではありません。
彼らが権限を渡さない本当の理由は、中身を見られると困るからですよ。月々数千円で借りられる低スペックサーバーを、数万円で「保守料」という名の高額な家賃で貸し出している。そのみすぼらしい内部事情を、運営者に知られたくないだけですね。
セクション二:200万円の「中抜き」構造
ところで、制作時の200万円という見積もり。その内訳を、オーナーはどこまで把握していますか?
…企画構成費、デザイン費、コーディング費、システム構築費……項目は並んでいたが、大手だし適正価格だと思っていた。
では、実際に手を動かした職人と、一度でも直接対話しましたか?
いや。窓口はいつも、スーツを着た清潔感のある営業担当だ。制作は「弊社の専門チーム」が担当していると言っていたが、そのチームの人間と話す機会は一度もなかった。
「中抜き」、あるいは「伝言ゲーム」の温床ですね。制作者と運営者の間に、「言葉を横流しするだけの人種」が何層も入り込んでいる。
実際に手を動かした下請けの職人には、200万円のうち、せいぜい数十万円しか渡っていないでしょうね。残りの100万円以上は、代理店の豪華なオフィスビルに吸収されたか、営業マンの人件費に消えた、といったところでしょう。
サイト運用において、現場の職人と直接話せないことがどれほどのリスクか。情報の鮮度を捨て、マージンだけを支払う。あなたは彼らの諸々のコストを肩代わりするために、高いお金を払ってサイトを作っているのと同じです。
実際に手を動かした下請けの職人には、200万円のうち、せいぜい数十万円しか渡っていないでしょうね。残りの100万円以上は、代理店の豪華なオフィスビルに吸収されたか、営業マンの人件費に消えた、といったところでしょう。
サイト運用において、現場の職人と直接話せないことがどれほどのリスクか。情報の鮮度を捨て、マージンだけを支払う。あなたは彼らの諸々のコストを肩代わりするために、高いお金を払ってサイトを作っているのと同じです。
セクション三:20万円という名の「身代金」
まぁ、制作までのことはしょうがないとして…この「移管費用20万円」はどうなんだ?
彼らは相応の作業が発生すると言っている。ドメインを他社に移したり、データを抽出したりするのは、それなりに高度な技術が必要なんじゃないのか?
彼らは相応の作業が発生すると言っている。ドメインを他社に移したり、データを抽出したりするのは、それなりに高度な技術が必要なんじゃないのか?
ドメインの移管作業など、知識があれば数十分で終わる事務手続きです。データの抽出? あなたが200万円払って作ったデータですよ。そもそも簡単に書き出せるように設計しておくのが、プロの仕事です。
彼らが要求しているのは、実作業の対価ではありません。いわば、「あなたを解放するための身代金」です。
彼らが要求しているのは、実作業の対価ではありません。いわば、「あなたを解放するための身代金」です。
身代金……。
「これまで安く管理してやったんだから、最後ぐらい色を付けろ」という、品性の欠片もない嫌がらせに見えます。あるいは、20万円という、「払えなくはないが出すのが惜しい」、絶妙な金額を突きつけることで、あなたに諦めさせ、管理費という名の年貢を絞り取り続ける魂胆ですかね。
200万円払って手に入れたのは、資産ではありませんでしたね。解約するまで、他人の土地を借りて商売をさせてもらう権利…不動産でいうと、不自由な賃貸物件とでも言うのでしょうか。
200万円払って手に入れたのは、資産ではありませんでしたね。解約するまで、他人の土地を借りて商売をさせてもらう権利…不動産でいうと、不自由な賃貸物件とでも言うのでしょうか。
セクション四:メールという名の「首輪」
さらに滑稽なのは、ドメインとサーバーを彼らに丸投げした結果、会社のメールアドレスという「生命線」まで人質に取られていることですかね。
…ああ。その通りだ。「サーバーを移転するとメールが数日間止まりますよ」「過去の受信データがすべて消えるかもしれませんよ」などと言われ、それが怖くて踏み出せないところもある。
それも、彼らが仕掛けた「首輪」の一部です。Webサイトが見られなくなるだけならまだしも、ビジネスの根幹であるメールが止まるという恐怖。それをチラつかせれば、決裁者は沈黙する。
あなたはプロに任せたつもりでしょうが、実際には、自分の実印を他人に預け、返してほしければ金を出せ、と言われているのと同じ状況です。
あなたはプロに任せたつもりでしょうが、実際には、自分の実印を他人に預け、返してほしければ金を出せ、と言われているのと同じ状況です。
セクション五:著作権という名の「罠」
あと不可解なのが、著作権の話だ。200万円払ったのに、なぜ「利用許諾料」なんてものが発生するんだ? 私が企画し、私が金を払ったサイトじゃないか。
契約書の裏面、あるいは規約の第何条かを確認しなかったあなたの落ち度ではありますね。「デザインおよびプログラムの著作権は、弊社(代理店)に帰属するものとする」。この一行が、今、あなたの喉元にナイフとして突きつけられている。
そんな……。
彼らはこう言いたいのです。「形は作ったが、権利は売っていない。他社に持っていきたいなら、その権利を買い取れ」と。
200万円という大金は、あくまで「彼らの所有物を、一時的に使わせてもらうための料金」だったわけです。デジタル資産が企業の成否を分けるいまの時代に、自分の持ち物ひとつ自由にできない会社が、どうやって生き残るつもりですか?
200万円という大金は、あくまで「彼らの所有物を、一時的に使わせてもらうための料金」だったわけです。デジタル資産が企業の成否を分けるいまの時代に、自分の持ち物ひとつ自由にできない会社が、どうやって生き残るつもりですか?
セクション六:沈みゆく船の「損切り」
…情けない。200万もかけて、私は「自分の城」ではなく「他人の檻」を建てていたのか。そして、たかが移管作業に20万円……。それだけの身銭を切るだけの価値があるのか?
20万円を惜しんで『人質』のまま甘んじる。それは、社員がデジタルという武器を自分の手で使いこなす機会を、あなたが奪い続けているということにもなります。自律できない組織に、今のWebを戦い抜く力など宿りません。
「お付き合い」という名の幻想を捨てましょう。彼らはあなたのビジネスを加速させるパートナーではない。あなたの無知につけ込み、安定した収益源を確保しているだけの「管理人」です。
「人質」を救い出すには、痛み(コスト)が伴います。ですが、その痛みを恐れていては、御社に本当のデジタル資産が宿る日は永遠に来ません。
「人質」を救い出すには、痛み(コスト)が伴います。ですが、その痛みを恐れていては、御社に本当のデジタル資産が宿る日は永遠に来ません。
結び:審判
(しばらく俯いた後、ゆっくりと顔を上げる)…その通りだな。私は「大手だから安心だ」という言葉を免罪符にして、インフラという最も重要な土台を、他人に明け渡していた。自分の無防備さが、この結果を招いたんだ。
気づいただけでも良かったです。同じような状況で、自分が檻の中にいることすら気づかず、ずっと年貢を払い続ける経営者はいくらでもいますからね。
…分かった。今日、この場で決断する。この20万円は、高い勉強代として支払おう。そして、二度と、ドメイン一つ、サーバー一つ、他人の手に委ねるような真似はしない。
賢明な判断です。実体のない「安心」で自分を慰めるのは、もうやめましょう。自分の土地に、自分の足で立ち、自分の言葉で発信する。そこからようやく、本当の「Web戦略」が始まるのです。
動きましょう。まずは、この不当な檻の扉をこじ開けることからだ。リスさん。これからも、わが社の「防壁」として、厳しく見てやってくれ。
審判の刻は、すでに始まっています。檻から出た後の荒野をどう進むか。もし迷った時は、また呼んでください。冷徹な「羅針盤」が必要なら、何度でも伺いますよ。
あなたのWebサイトを「資産」へ。
ドメインやサーバーの権限、正しく把握できていますか?
2030年に向けたデジタル資産の監査・所有権奪還のご相談は下記より承っております。

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