実収益を伴わないコンテンツ運用の実効性【コンサル録:CASE FILE 002】

この右肩上がりのグラフが退場宣告!? 監査報告書(コンサル録)

本報告書のポイント(肝)

  • 「順調」という名の麻薬: 成約(利益)を語らないアクセス増は、経営判断を狂わせる「虚飾の数字」でしかない。
  • 更新の形骸化: 「日記」や「カタログのコピペ」によるサイト運用は、専門商社としての信頼を自ら破壊する「廃墟化」への道。
  • 現場コストの可視化: 目的のないWeb運用は、社員の貴重な生産性を奪い続ける「目に見えない巨大な損失」である。

【注意】 本記事は、とある専門商社の取締役(N常務)との実際のコンサルティング風景を元に再構成した、プチノンフィクションです。

登場する人物・団体名は仮名、交わされた会話は異なりますが、【本質】および提示した【戦略的助言】については、当日お伝えした内容を収録しています。


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CASE FILE: 002 数字という名の「虚飾」を買い続けるクライアント

クライアント:某専門商社 取締役(30代)
相談内容:月次レポート上の「アクセス増」と、実収益を伴わないコンテンツ運用の実効性監査

(深夜のオフィス。重厚なデスクに、色鮮やかなグラフが並ぶPDFレポートが映し出されている)

まずはこれを見ていただけますか。先月の月次レポートです。
見ての通り、アクセス数(PV)は前年比150%増。
SEOも、主要なキーワードで検索順位が確実に上がっているんですよ。
担当している代理店も「非常に順調に推移しています」と自信満々でした。
正直、半年ちょっとでこれだけ数字が跳ねるとは思っていませんでした。君はどう見ますか?
(レポートを無造作にスクロールしながら、冷めた声で)
常務。ひとつお聞きしたいのですが。
あなたは、それが自社サイトの「敗北の記録」になっているとは思いませんでしたか?
……な。失礼なことを言うじゃないか。
数字は嘘をつかない。この右肩上がりのグラフが、その証拠だろう。
確かに、数字そのものは嘘をつきません。ですが、その数字をどう切り取り、どう見せるかによって、現実はいくらでも歪められます。
この色鮮やかなグラフ、右肩上がりの曲線。わたしの目には、それが御社を市場から引きずり下ろすための「退場宣告」に見えています。
退場宣告だと? 誇張が過ぎるんじゃないかな?
これだけ多くの人がサイトを訪れているんだ。認知度が上がっているのは間違いないはずだよ。

セクション一:「順調」という名の思考停止

常務。このレポートのどこかに、「売上」や「利益」に関する具体的な記述はありますか?
それはないですが、今はまだ「認知」を広げるフェーズだからですよ。
代理店の担当者も言っていた。いきなり売上の話をするのは、Webの特性を分かっていない証拠だ、とね。
まずは分母を増やし、ブランドの存在を知ってもらう。分母が増えないことには、成約という分子は生まれない。これは商売の鉄則でしょう。
その言葉こそが、思考を止めた経営陣に対する、代理店の「甘い毒薬」です。
認知、潜在層、ブランディング。実態のない言葉で数字を飾り立て、本質的な「成約」から閲覧者の目をそらさせる。そういうタイプの業者っぽいですね。
しかし、アクセスが150%増えた事実に変わりはない。これは喜ぶべきことじゃないのかな?
少なくとも、何もしないよりはマシだろう。
最悪です。ターゲットではない人間をいくら集めても、それは広報ではなく、ただの「デジタルノイズ」です。
例えば、砂漠の真ん中で100万人にチラシを配っても、売れるのは「水」だけです。御社が売りたいのは、ただの水ではないはずです。
その例えは極論、というか色々とありえないけどね。まぁその例えで言うなら売りたいのは水ではないです。我が社の技術を活かした、高機能な産業機器です。
ならば、なおさらです。この「150%増えたアクセス」の中身を見てください。
大半が、御社の製品とは無関係なキーワードで流入している。ただの通りすがりです。
分母が増えれば分子も増えるというのは、ターゲットが一致している場合にのみ成立する理論ですよ。
だがそれでも、一人でも多くの人に知ってもらうのが先決だろう。その中に数パーセントでも見込み客がいれば、商社としては十分戦える。
その「数パーセント」を捕まえるための設計が、このサイトのどこにあるのですか?
今の御社は、買う気のない人間に向かって、拡声器で叫び続けているだけです。
その拡声器を借りるために、株主から預かった貴重な「予算」をドブに捨てていることになっていますよ?
……。

セクション二:「算数の書き写し」をレポートと呼ぶな

このレポート、誰が作成し、どのように説明されていますか?
代理店の担当者が毎月、対面で丁寧に説明してくれていますよ。
わざわざ遠方から足を運んで、パワーポイントを使って一時間以上かけてプレゼンしてくれる。非常に熱心な若者だ。私にも分かりやすく、噛み砕いて話してくれるんだよ。
(レポートをデスクに叩きつけるように置く)
これはプレゼンではありません。ツールから吐き出した数字を、ただPDFにコピペしただけの、いわば「算数の書き写し」です。
一時間かけて行われているのは、御社の未来を語る対話ではなく、ただの「読み聞かせ」に過ぎません。
読み聞かせ…? それはどういう意味かな。彼らはプロとしてデータを分析してくれているはずだ。
言葉通りですよ。アクセスが増えた原因は何か。なぜそのアクセスが、一向に問い合わせに繋がらないのか。
サイトのどのページが障壁になり、来月は具体的にどのボタンを、どのテキストを書き換えるべきか。
その判断に必要な知恵が、この厚みのある紙束のどこに書かれていますか?
それは、現状の数字を共有するのが先決だと言われていて。
それに基づいて次の戦略を練るんだと思っていたけれど…実際のところ、改善案はいつも「もう少し様子を見ましょう」だったな。
彼らは「数字の管理者」であって、御社の「商売の伴走者」ではありません。
とりあえず順調そうな数字だけを拾い集め、波風が立たないように報告する。
あなたは、その「ご機嫌取りの紙屑」を受け取るためだけに、取締役としていくらの決裁を承認しているのですか?
まぁそうは言っても、彼らのおかげで、我が社のサイトは以前よりずっと華やかになったんだ。
華やかになれば、会社の利益が増えるのですか? 常務が最優先で確認すべきは、PV数ではなく「決算の数字」のはずです。
アクセス数という名の「虚飾」に一喜一憂し、その裏にある「成約の欠如」から目を逸らす。それは経営ではなく、ただの数字遊びですよ。
いい方きついなぁ…

セクション三:更新という名の「埋め立て作業」

次はコンテンツの中身を見ましょう。常務、サイトを動かす努力はされているんですか?
もちろんですよ。現場の社員には「毎日更新」を徹底させています。
Webは更新が命だと聞きましたからね。ほら、この新着情報の欄を見てください。昨日もアップしたばかりですよ。
(新着情報の画面をモニターに映し出す)
拝見しました。昨日投稿された記事のタイトルは「本日のランチ」。その前は「オフィスから見える夕日」。
さらにその前は、三ヶ月分遡ってようやく「夏季休暇のお知らせ」。
親しみやすさを出すために、日常を伝えるのも大事だと言われたんだ。
カタログスペックを載せるだけじゃ味気ないと思って、工夫しているつもりだったんだよ。新製品の情報だって、ちゃんと載せているしね。
常務。休む時と、食事の内容しか声を上げない場所を、ユーザーはなんと呼ぶか知っていますか?
……何でしょう?
「チラシの裏」です。
チラシの… 裏……? バカなことを。我が社はビジネスのために、毎日誰かが何かを書いているんだ。社員も時間を割いて、工夫して書いているんだぞ。
お客さんが知りたいのは、御社の社員が何を食べているかでも、いつ休むかでもない。
「御社が、自分の悩みをどう解決してくれるか」、それだけです。
一年に数回、義務感だけで投稿される「休暇のお知らせ」。あるいは、業務とは無関係な「日記」。
このサイトを初めて見たお客さんは、こう思います。「ああ、この会社はもう、Webで商売を成立させる気がないんだな」と。
だが、更新を止めるとサイトが止まっているように見えるだろう? 常に動いていることを見せなければいけない、というプレッシャーは、現場にも私にもあるんだよ。
「動いていること」を証明するために「価値のない情報」を垂れ流す。それがどれほどブランドを毀損(きそん)するか、考えたことはありますか?
価値がないとは、またきつい言い方だな。新製品の情報だって、出ればすぐに載せている。
(遮るように)型番やスペックを横流しにするだけの記事に、価値などありません。そんなものはメーカーの公式サイトを見れば済む話です。
……。
専門商社である御社に求められているのは、製品データそのものではなく、その製品をどう現場で使いこなすか、という「知恵」のはずです。
それがない場所に、お客さんがわざわざ訪れる理由はありません。当然の帰結です。
日記で埋め立てられ、メーカーの劣化コピーが並ぶサイトに、専門性を感じるお客さんなど一人もいませんよ。

セクション四:現場の悲鳴を「コスト」で換算しろ

この「無意味な更新」のために、現場の担当者はどれだけの時間を費やしていますか?
週に数時間は割いているはずですよ。書くことがない、とぼやきながらも、なんとかやらせている。
それが彼らの仕事の一部だと思っているし、Webを活用するなら通るべき道でしょう。
その「ぼやき」の正体は、現場の絶望です。書く意味も、届ける相手も分からないまま、ただ「更新しろ」という命令に従う。
それは創作ではなく、もはや「精神を削る苦行」ですよ。
しかし、更新し続けないとSEO、検索順位に悪いと聞いたんだよ。それなりに理由があってのことだ。現場もそれを理解してくれていると思っていたが。
裏に何か書かれたチラシをいくら積み上げても、チラシの山ができるだけです。
中身のない、誰にも読まれないページを増やすことは、御社のドメイン、つまりサイトの評価を自ら汚す行為に他ならない。
Googleのアルゴリズムは、もう「更新頻度」だけで評価するほど愚かではありませんよ。さらに言えば、その担当者の時給を計算したことがありますか?
時給……言われてみれば考えてなかったな。
意味のない作業に費やされる人件費。その時間があれば、彼らはもっと顧客に寄り添う仕事ができたはずです。
あるいは、現場でしか得られない“知恵”を磨くことだってできたはず。あなたは、代理店に「うちのサイトは動いていますよ」というポーズを見せるためだけに、大切な社員の生産性を無駄にしていませんか?
それが取締役としての正しい投資ですか?
……。
経営陣の仕事は、リソースを最適化することです。機能しないシステムを維持するために、優秀な社員の時間を浪費させるのは、怠慢以外の何物でもない。
その数時間が積み重なり、一年でどれだけの損失になっているか。その数字こそ、あなたが役員会で報告すべき真実ですよ。

結び:審判

認めましょう。わたしは、あの綺麗なグラフに依存していたんだ。「順調だ」と言われるたびに、自分がWebについて勉強しなくていい理由、考えなくていい理由を手に入れていた。
面倒なことはプロに任せている。だから大丈夫だ、と自分に言い聞かせていたんですよ。
常務。今の状態を、車の運転に例えましょう。エンジンの内部が焼け焦げ、タイヤのネジが一本外れかけている。
なのに、助手席の代理店はこう言っている。「N常務、見てください。スピードメーターの針は150キロを指しています。順調ですよ。このまま加速しましょう」と。
……恐ろしい例えですね。
もっと恐ろしいのは、その後部座席で、スピードメーターの針だけを眺めて安心している常務自身です。
車がガードレールを突き破り、奈落の底へ真っ逆さまに落下する瞬間まで、あなたは「順調な数字」を信じ続けるつもりですか?
……分かりました。もう、いいでしょう。このレポートは、今日で終わりにします。数字の裏側にある「本当のお客さん」が誰なのか、自分の目で見極め直すことにしますよ。
賢明な判断です。Webは魔法ではありません。あなたの「商売への意志」が投影されない限り、それはただの電気信号の塊です。
最後まで手厳しいな。…今日はここまでにしましょう。次に来てもらう時までに、この「チラシの裏」をどう改善するか、答えを出しておきますよ。
審判の刻(とき)は、すでに始まっています。もし、また自分の現在地が分からなくなった時は、いつでも呼んでください。冷徹な「審判」が必要なら、何度でも伺いますよ。

あなたのWebサイトを「資産」へ。

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AI×SEOコンサルタント 桐山智行(H.T.P.代表)

この記事の著者

桐山 智行(H.T.P.代表 / AI×SEO Guide Lab)

ガラケー時代からSEOに取り組んできた、SEO歴17年のWeb制作者・AI×SEOコンサルタント。中小企業や士業を中心に、WordPress制作、検索流入アップ、AIを活用したコンテンツ設計を支援しています。
このサイトでは、実務で検証したAI×SEOのノウハウと再現性のある手順を公開していきます。

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